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問いを立てる

 人間社会学部はアクティブ・ラーニングを強みとしている。受け身の学びより、能動的な学びのほうが深い学習につながることは確かである。アクティブ・ラーニングと一口に言っても学生同士の学び合いを重視する協同学習(Collaborative Learning)やPBL(Project Based Learning)など、さまざまな魅力的な取り組みがある。学習方法が精緻化する一方で、学生の能動性を引き出すための、いわばプリミティブなしかけに「教室から出ること」がある。特定の時限、特定の教室において椅子に座っているという行為自体がそもそも受け身な習わしだからである。

 というわけで、ゼミや学部の公募制アクティブ・ラーニング「まちなみ塾」では、フィールドワークを重視している。ゼミでは離島を、まちなみ塾では伝統的建造物群保存地区を主たるフィールドとしている。

 フィールドには、さまざまな気づきが転がっている。昨年度、まちなみ塾で通った商家町の佐原では、ジェンダー規範について考えさせられた。当初、自然環境と歴史的環境の調和をどのように図るのかといった問題関心をもっていたのだが、取材を重ねるうちに「家の労働力としての女性」といった商家町のジェンダー規範により、商家のおかみさんたちがまちづくりに携わっていくことの難しさに気づいた。と、同時にそうした現実のなかで彼女たちがつむぐ創造性に生きた学びを得ることができた。「ジェンダー平等を実現しよう」といった鳥の目的な語りよりも、虫の目にうつる切実なリアルは響くものがある。

 ゼミでは、現場で受け取ったこうしたリアルな課題と、自らの問題意識とを結びつけたところで問いを立てることをうながしている。クリアな問いが各々のうちに根ざしたとき、ひとは自ずから動き出すからである。あなたの問いはなにかと学生に問う日々である。

『きずな』41号所収

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