Faculty of Humanities and Social Sciences, CUC
パッチワーク的発 展の行方
新島を歩くと、さまざまな外国風の造形に出会うことができる。モアイ像もといモヤイ像はもとより、湯の浜露天風呂や新島親水公園などは、古代ギリシャの神殿、古代ローマのコロッセオを模しているようである。集落のなかを歩いても「民芸モヤイ」のお店の外観はエジプト美術をベースにしている。宿にも「パスポートのいらない、海外。」というフレーズの新島のポスターを張っている。近年の観光客が地域固有のものを求めるなかで、新島のありようはユニークに見える。地域固有のものというよりは、世界中のさまざまなモチーフを取り込んでいるようである。このありようをどう評価するのかゼミのなかで議論した。私たちは流人が新島にさまざまな文化をもたらしてきたことと関連づけ、外部からさまざまなものを受容する伝統が新島にはあるのではないかと思い至った。ならば、このパッチワーク的なありようも地域固有のものだと結論づけた。そう考えると、新島のおみやげ物屋にある「アロハドール」の味わいも深い。
そもそも新島のモヤイ像や湯の浜露天風呂、新島親水公園、「民芸モヤイ」は、新島産出のコーガ石からなる。となると、地域固有のマテリアリティのうえにパッチワーク性が展開していることになる。こうした新島のありようは伝え方に一工夫がいるように感じる。このパッチワーク的な造形が地域固有のものだとするメッセージをセットで情報発信する必要があるからである。すなわち、①コーガ石が新島の地域資源の核となること、②このコーガ石に“流人”がもたらすパッチワーク性が宿り、ユニークな造形が誕生していること、この二点を明示しておく必要がある。ちなみに、ゼミ生は、新島はコーガ石をもっと前面に出した地域ブランド化を図る必要があるとし、とくに新島ガラスをもっと取り上げるべきだと論じていた。たしかに、コーガ石にはさまざまな活用方法があるが、その希少性を活かしブランド力を引き出すためにその用途を戦略的に絞っていくのもひとつの方法といえる。
